後書き
「International吉田版画アカデミー」創立者・吉田遠志先生は、数多くの業績を残されました。ここでは、その中で私が尊敬する三つの事について書いてみたいと思います。
その一は、木版画家として、多くの素晴らしい作品を生み出された事です。 後期のアフリカシリーズは言うまでもなく、四・五十代の頃に作られた、数百もの抽象の作品群、そして初期の美しい日本の風景。 加えて忘れられないのが、先生がその晩年に情熱を傾けて取り組んだ、アフリカの動物絵本のシリーズです。
その二は、先生が大作製作用のアトリエを置かれた・・五尺×七尺の世界最大の多色木版画を制作されている・・・長野県美麻村(現・大町市美麻)と、アメリカ・カリフォルニア州メンドシーノとの姉妹村提携に尽力された事です。
「吉田版画アカデミー展」と同じく、今年で三十周年を迎えるこの交流事業は、今では小中学生を中心に毎年数十名もが相互に訪問し合う、市の大きな事業に発展しています。
その三は、「International吉田版画アカデミー」の創立です。 その名の通り、日本の木版画の技術を世界に広げる大きな役割を果たして来ました。ここで学んだ海外の生徒の多くが、今ではその国を代表する木版画の作家や教育者として活躍しています。
30年の歴史を刻んできた「International吉田版画アカデミー展」 、その第一回から参加している者として、感慨は大きなものがあります。 思えば、30年は人間の一世代。 アカデミー展出品者の大半が50代、60代になった今、世代の交代が急がれているように思えます。
来年2011年は、「吉田遠志先生・生誕百周年」の記念の年に当ります。私達、アカデミーのメンバーも、皆、心を新たにして、次の三十年のための良きスタートを切りたいと願っています。
最後になりましたが、毎年、素晴らしい会場を提供してくださり、また巡回展にも多大なご協力を頂いているモンベル・クラブ様に、心より感謝を申し上げます。
平成22年 12月 8日 図録制作担当 岡本 流生